評伝 05 · CPO → Labs責任者

Mike Krieger
— 二度目の創業者

Instagram共同創業者 · エンゲージメント経済を作った男の、反省としての製品規律

20億人が使うアプリを作り、人間の注意を最も上手に奪う仕組みを設計した本人が、 「エンゲージメントより価値」を製品原則に掲げる会社に来た。 Kriegerの在籍そのものが、Anthropicの最も雄弁なプロダクトステートメントだ。

Instagram → Artifact → Anthropic

2010年、Kevin SystromとInstagramを共同創業。「シンプルさを守り抜く」規律で 写真共有を再発明し、Metaへの売却後もプロダクトの技術側を率いた。 その後のニュースアプリArtifactは市場に恵まれず2024年に閉じたが、 同年AnthropicのCPOに就任。2026年からは実験部隊Labsを率いる。 Instagram時代はアイデアから製品まで4-5日かかった。いまは 週末に同等物をエージェントと作る——本人が最良のユーザー事例になっている。

哲学 — エンゲージメントの発明者による、エンゲージメントの拒否

Lenny's Podcast(2025-06)で語られた原則は明快だ。滞在時間や開封率ではなく、 ユーザーが実際に価値を得たかで製品を測る。ChatGPTとマインドシェアを競わず 「Embrace who you are」——自分たちが何の会社かを受け入れる。 モデル能力が製品に追いついていない「product overhang」を探し、 いまのモデルではなく6ヶ月先のモデルに向けて作る。 チームは小さく資金は絞り、ただしトークンは無制限に—— 「underfund + unlimited tokens」が良い製品を生む、という逆説的なリソース論。

Fable 5と「また新人になった」

2026年6月、Fable 5リリース直後のインタビュー(AI & I)でKriegerは 率直に語った——「I feel like a total newbie again」。 新モデルのたびに自分のワークフローが陳腐化する。夜、エージェントにタスクを託して 「Wish Claude a good night(Claudeにおやすみを言う)」のが日常になった。 モデル選択は直感になり——「これはFableに聞くほどの質問じゃない」—— 検証(verification)こそが残された人間の仕事だと言う。彼の言葉では 「completing the swing(スイングを振り切る)」。生成はAIがやる。 振り切って完成させ、品質に責任を持つのが人間だ。

90-95%とマージキュー

Anthropic社内のコードの90-95%はすでにAIが書く、とKriegerは公言する。 するとボトルネックは書くことから判断とマージキューに移る。 何を作るか、どの変更を通すか、誰が責任を持つか。 Instagramで「シンプルさを守る」ために機能を断り続けた男は、 いまエージェント時代の製品づくりで同じ仕事をしている—— 作れるものが無限になったとき、作らないものを決めるのが製品責任者の仕事になる。

AMPLが盗むべき型

反省を配役にする

「エンゲージメントの発明者が価値主義を語る」から説得力が出る。臨床医がAI医療を語る構造と同じ

6ヶ月先に作る

いまのモデルの弱点回避に工数を使わず、次世代で開花する設計に張る。プロダクト判断の時間軸を変える

検証が人間の仕事

生成はAI、品質責任は人間。AMPLのqa-reviewer文化・verification規律はこの分業の実装

出典: Atlas §17.11-A / Lenny's Podcast(2025-06)/ AI & I(2026-03, 2026-06)